そうすれば女性問題は起こらない

そうすれば女性問題は起こらない

平太少年の仕事は羊飼いだ。

朝早く、羊たちを引き連れ山へ出かけ、昼過ぎには小屋へ戻る。
これが毎日続く。

ある日、山仕事を終えた平太が小屋に戻ると、何とも言えない不穏な空気が辺りに漂っていた。
もちろん気のせいだろう。
しかし平太の悪い予感はよく当たるのだ。
この時も。

いつものように、羊を一頭ずつ数えて確認しながら、小屋の中へ入れる。
羊が迷子になることはめったにないが、一頭でも足りないとなれば、親方にどやされるだけでは済まない。

数えやすいように一列に並べられ、小屋に入っていく羊たち。
そして残り十頭ほどになったとき、列の後ろの方の羊たちが騒ぎ出した。

オオカミだ!
羊を狙って、オオカミが木陰に隠れていたのだ。

まだまだ続きます

山では十分注意しているが、オオカミは夜行性だ。
昼間、しかも人里まで、オオカミが下りてきたのは初めて見た。
よほど食料にありつけない日々が続いたのだろうか。

隠れて狙っていることに気付かれたオオカミは、なりふり構わず飛び出してきた。
予想外の出来事に平太は慌てたが、仕事を忘れることはなかった。

まずい!だがまだ間に合う!
さあお前たち、早く!早く小屋に入るんだ!

一頭一頭羊の尻を叩き、小屋の中へ押し込める。
そして最後の一頭。

間に合った。
羊をオオカミに食われることはなかった。
しかし平太は。

・・・平太だけは、間に合わなかった。
護身用の鉈を振り回す余裕もなかった。
無残にも喉を食いちぎられ絶命し、その場ではらわたを貪り食われた平太。
気付いた村人によってオオカミは追い払われ、ボロ切れのような亡骸だけが残されたのは幸か不幸か。

一部始終を見た者はいなかったが、何が起こったかは一目瞭然だった。
最後まで職務を全うし命を落とした少年を、村人たちは心から憐れんだ。

いつしかこの事件も人々の記憶から消え去り、こんな言い伝えだけが後世に残った。

『眠れぬ夜は羊を数えるとよい。そうすれば安らかに眠りにつけるだろう』

それが永遠の眠りを意味していることを、知る者は少ない。

***

さて次の話。

***

少女ハイ子の仕事はブランコ乗りだ。

朝早く出かけ、夜までブランコに乗り歌い続ける。
これが週5日。

ある日、仕事を終えたハイ子に声をかけた同僚男性の、車で送るよ、というその言葉には、何とも言えない淫靡な空気がまとわりついていた。
もちろん気のせいだろう。
だがハイ子の悪い予感はよく当たるのだ。
この時も。

いつもより遅い時間。
門限が迫っているのを確認し、車に乗り込む。
男性と二人きりになることはめったにないが、一分でも門限を過ぎたとなれば、おんじに怒鳴られるだけでは済まない。

逃げることを拒否されるかのようにシートベルトの装着を指示され、車は走り始める。
そして家まで残り数百メートルかというとき、突然車が止まり、ハイ子の胸に手が伸びてきた。

送りオオカミだ!
羊を狙って、オオカミはやはり本性を隠していたのだ。

男の性欲は十分承知しているが、彼は一見草食系だ。
こんなに突然、しかも車の中で、オオカミになる男は初めて見た。
よほど女にありつけない日々が続いたのだろうか。

隠していた本性をさらしたオオカミは、なりふり構わず襲い掛かって来た。
予想外の出来事にハイ子は慌てたが、貞操を忘れることはなかった。

やばい!でもまだ大丈夫!
さあ早く、早く車から出ないと!

一秒一秒、オオカミの攻めに反撃し、シートベルトを外す。
そして車外へ脱出。

間に合った。
羊はオオカミに食われることはなかった。
しかしオオカミは。

・・・オオカミは、ハイ子の反撃で死に直面した。
自慢の巨根を振り回す余裕もなかった。
無残にも睾丸を殴りつぶされ悶絶し、目からあごまで何度も引掻かれ流血したオオカミ。
気付いた人々によってオオカミは通報され、ボロ切れのような男根がかろうじて無事だったのは幸か不幸か。

一部始終を見た者はいなかったが、何が起こったかは一目瞭然だった。
最後までハイ子に罵声を浴びせ続けたオオカミを、人々は心から蔑んだ。

いつしかこの事件も人々の記憶から消え去り、こんな言い伝えだけが後世に残った。

『眠れぬ男はオナニーをするとよい。そうすれば女性問題は起こらないだろう』

それが永遠の童貞を意味していることを、知る者は多い。